有志が集まって、ボランティア活動を始めると、一定期間を満たすと規模が大きくなり、有志団体から法人成りを検討するようになります。
法人を設立するとき、どの法人になればいいのか、すぐに判断はつきにくいでしょう。
非営利法人には、様々な法人格があり、どれを選べばいいのか、しっかりと調べる必要があるからです。
財団法人は、お金が300万円以上あって、基本財産として保有できる場合ですが、一般社団法人とNPO法人には、おなじような設立要件に見えてしまいます。
どちらを選択したらいいのか、一度、整理してみようと思います。
それぞれの法人格と特性
キーワード①「非営利法人」
一般社団法人と、NPO法人(特定非営利活動法人)は、ともに「非営利法人」の扱いになります。(※営利法人を選択する一般社団法人もあります。)
まずは、この「非営利法人」をしっかり理解する必要があります。
一般企業の「営利法人」と比較するとわかりやすいです。
つまり、事業を行って、余ったお金を株主等に分配できるのが、「営利法人」で、分配できないのが「非営利法人」なのです。
慈善事業≠非営利法人であり、
余剰金の山分けができない=非営利法人なのです。
キーワード② 行える事業に制限があるか、ないか
実は、ここに、一般社団法人とNPO法人の違いがでてきます。
一般社団法人は、法に抵触しなければ、特に事業を限定されることはありませんが、NPO法人は、20分野が法律で定められており、それ以外行うことができません。
キーワード③ 情報開示を要求されるか、されないか
一般社団法人の設立は、登記のみで完了しますが、NPO法人は、所轄となる自治体の審査を受ける必要があります。
そして、所轄自治体に、事業年度が始まる前に、事業計画書や予算書を提出し、事業年度を終えたら、事業報告書や決算書をしなければなりません。
もちろん、代表者変更や、その他異動事項が生じれば、都度、所轄自治体に届出をする必要があります。
その点、一般社団法人は、行政に対して提出することがないため、運営の負担がNPO法人と比べて軽くなります。(所属する同業者団体等に、決算書等の報告がある場合もあります。)
そして、NPO法人には、決算のたび、情報開示を行わなければなりません。
この点だけ、比較すると、NPO法人は事務負担が大きいように見えます。
キーワード④ 設立の要件が違う
設立に必要な人数、役員の制限等に、違いがあります。
そして、キーワード③のとおり、所轄行政のチェックの有無の違いがあります。
以下のとおり、大まかな違いを、一覧で確認してみます。
一般社団法人 (非営利法人) |
NPO 法人 | |
設立に必要な人数 | 社員2名以上 | 10名以上 |
設立に必要な役員の人数 | 理事1名以上(理事会設置法人の場合、理事3名以上、監事1名以上) | 理事3名以上、監事1名以上 |
役員の制限 | 有り(三等親以内の親族が総数の3分の1以下であること) | 役員法定員数を満たすこと及び役員報酬を受ける者は役員総数の3分の1以下であること |
所轄庁の有無 | 無し | 有り |
所轄庁の認証の有無 | 無し | 有り |
市民・利害関係人への情報開示制度 | 無し | 有り |
目的事業の制限 | 無し | 有り |
税制上の優遇措置 | 収益事業のみ課税 | 収益事業のみ課税 |
詳しくは、専門家に問い合わせていただけるとありがたいのですが、これだけでも、一般社団法人は設立しやすいように見えます。
ただ、法定設立費用(公証手数料や登録免許税など)が、NPO法人の場合発生しません。
自分たちで、設立手続きを行うこともできますが、行政とのやりとりは、行政書士などの専門家に任せたほうが、時間のロスは免れるでしょう。その分、報酬手数料は発生するので、設立費用の比較は、どちらも一長一短のようです。
事業内容によって選択しよう
もし、行う事業が、NPO法人の20分野に含まれるのであれば、NPO法人を選択してもいいかもしれません。
なぜなら、所轄行政に認められ、社会貢献事業として市民に受け入れられることによるメリットがとても大きいからです。
その点、一般社団法人は、誰でも設立登記することができるので、社会に与えるインパクトが薄くなる可能性もあります。
つまり、行う事業が、地域に認められるものであれば、堂々とNPO法人を選択し、有志の思いや同業者団体のように、自分たちで事業を決めて運営するのであれば、一般社団法人を選択する、という考え方もできます。
ただ、気をつけるべきことは、自分たちだけで決めず、専門家にしっかり相談していただき、きちんと根拠を納得した上で、選択していただければと思います。
設立がゴールではなくスタートです
設立までは、一つの山です。特に、NPO法人は、設立まで時間がかかり、ある種産みの苦しみを実感するかもしれません。
しかし、本当のスタートは、設立したあとです。
その後の活動が、各々描いていた未来予想図に近づけるよう、最初の入り口を、しっかり吟味していただければと思います。