公益法人会計基準から公益法人に求められることを紐解く

公益法人経理

公益法人の運営に、会計基準を理解することが求められています。

公益性を維持するための、仕組みの一つに会計基準が設けられているのです。

 

公益法人設立には、たくさんの経緯があります。

企業から、相続によって、同業者団体によって、ひとりの寄付者によって。

さまざまな設立経緯があるのです。

 

一つ一つバックボーンが異なる団体に、一つの共通理解として、

公益法人会計基準を理解しておくことは、大切です。

今日は、少し深掘りして、成り立ちを見てみましょう。

 

公益法人会計基準の歴史から見る

 

民法34条

公益法人は、明治29年に制定された民法34条に基づいて設立される社団法人及び財団法人を指します。

実は、公益法人に関する法律は、明治時代に制定された民法時代が長く続いています。

私がまだ、若かった頃、当時の財務諸表をチラ見したことがあります。
ガリ版で擦られた古い財務諸表は、「収支計算書」をメインに作成されていました。

当時は古いものに興味がなかったので、きちんとみたわけではありません。

しかし、設立から100年経っている古い団体の帳票は、作成するだけでも重労働だったことを容易に想像できました。

 

昭和60年基準

明治から時がすぎ、昭和60年に「公益法人会計基準」が設定されました。

「60年基準」と言われているものです。

財務諸表では、「収支予算書」、「収支計算書」、「正味財産増減計算書」、「貸借対照表」、「財産目録」「計算書類に対する注記」を作るようになっています。

 

ここから求められていることを類推すると、

以下のように考えられます。

 

・お金のもらい方と使い道、資産の売却と購入を予め決めること(収支予算書)

・予め決めた通りに、収入と支出を行うこと(収支計算書)

・基本財産の増減をきちんと管理すること(正味財産増減計算書)

・今持っている財産を明確にしておくこと(貸借対照表、財産目録)

・継続して行われる事業と、単発事業を分けて管理すること(一般会計、特別会計に区分)

 

寄付で得た資金や財産が、どのように運用されたのか。事業にどのような内訳で資金が使われたのか、きちんと明記することが求められていることから、

寄付や補助金を支払った者に対して、お金の使い道や運用を報告することに重点を置かれた仕組みであることがわかります。

例えると、お年玉をくれた子供が、お小遣い帳をつけて、残金がいくらになっているか、親に報告するようなイメージです。

 

平成16年基準

時代は移り変わります。

新「公益法人会計基準」として、平成16年に、全面的改正が行われました。

理由は、民法だけだった公益法人の法律が、「公益法人制度改正関連三法」が成立するため、会計基準も改定されたのです。

これが、16年基準と言われるものです。

財務諸表も、「貸借対照表」「正味財産増減計算書」「キャッシュフロー計算書」「附属明細書」「財産目録」「財務諸表の注記」になりました。

会計区分も、公益事業と法人運営部門(間接部門のようなもの)と区分方法が変わります。

そして、「収支予算書」と「収支計算書」の作成義務がなくなりました。

 

ここから、ガラッと様子が変わります。

今まではお金の使い道を管理する会計でしたが、公益法人制度改正関連三法(法人法、認定法、整備法)が制定されてから、一部の利害関係者への資金流出がないか、公益事業のための資金が別目的で使用されていないか、厳密にチェックできるような仕組みに変化しています。

平成20年基準

平成16年基準をもとに、財務諸表の注記表に記載する事項に、公益法人と支配関係のある法人や近親者がいる場合の取引を明記することがつき加えられました。

 

公益性と企業会計の理論をくっつけた今の会計基準

 

確かに、関係三法ができた経緯は、公益法人にまつわる不祥事が問題になったことが由来となったと言っても過言はないでしょう。

せっかく寄付したのに、一部の人が有利になっていたり、補助金を使って理事の御殿を立てたり(本当にあったかどうか、わかりませんが。)、寄附したのに、別の事業に使われていたりする、不正利用を極力排除する国の決意を感じます。

また、バブル期と違い、財政難に陥る公益法人も増えたことで、公益事業が、ちゃんと継続できるよう財政を維持することも求められるようになりました。

ここで、企業会計の考え方、「損益」が導入されたのです。

寄付もらって公益事業を行っても、赤字続きであれば事業を継続することができなくなります。

そのためには、事業の中では資金を使い切るようにし、会費収入や収益事業で得た利益で、法人全体の財政を維持するように方針転換されました。

収支予算書と収支計算書が除外され、正味財産増減計算書が損益計算書の役割を果たすようになったのです。

収入に色をつけるための会計基準

 

公益法人会計基準で、一番特徴的なのは、お金に色をつけることです。

まず、事業ごとにはっきりと色分けします。

 

公益目的事業(公益法人が求められている事業)

収益事業(法人の財政を補填させる事業、利益を出すことを求められる事業)

法人会計(法人の運営を行う事業)

この3つに分けられます。

入る時も出る時も、どの事業区分からか、はっきりさせないと、仕訳が切れないようになっています。

 

事業の収入支出と、基本財産の増減、使途が特定された寄附、それぞれ、色をつけます。

布に例えると、縦糸と横糸を明確に色分けするようなイメージでしょうか。

企業会計の損益計算書は、売上、原価、経費、その他の収支、最後に利益がどのくらい残ったか、が求められていますが、

公益法人の財務諸表は、事業ごとの損益と、財産管理としての増減を組み合わせたものになっています。

そのため、非常にわかりにくいものになっています。

 

 

このように、現在の公益法人会計基準では、お金の増減だけではなく、それぞれのお金に、事業区分ごとの色を塗っていくような仕訳が求められています。

手間もかかるし、理解しにくいため、なかなか浸透しづらいものになっています。

しかし、新しい会計基準に移行した後も、収支計算書でないとわかりづらいという理由で、求められていない財務諸表を作成し続けるのは、本来の目的からずれてしまいます。

新しい考え方が生まれた理由は、きちんとあり、これからは財産運用にも厳しい時代が来ることを考えると、ちゃんと利益を残す考え方にシフトチェンジした方がいいのです。

公益法人の運営する際、ぜひ公益法人会計基準にあった経理を行なって、求められる姿を維持できるようにしていただきたいと思います。

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